洗い物戦争もひと段落して縁側でふたりごろ寝していると不意に、私の前髪に彼の手が重なった。
『前髪ずいぶん伸びたんじゃない?』
私の前髪をはけながら、おでこを撫でてくる。
その心地よさに一瞬何もかも手放してしまいそうになる。
「そうだね。」
すると彼は形のいい唇を曲げて
『俺が切ってあげましょう。』
と提案してくる。
「いいです、伸ばしてるんで。」
『どうして?切ってあげるのに。
俺器用ですよ?』
別に彼の不器用を疑っているわけではない。
ただ、
「子供っぽく見えるじゃない?」
『そうかな……。まぁ、長いと大人綺麗に見えるよ。』
「そうでしょう!」
撫でていた手を一度離して頬を捉え私に向き直る。
『でも、何で雫さんはそんなに大人に近づきたいんだい?』
「だって、あたしただでさえ童顔でしょ?
なつめさん3つも年上だから。
私もなつめさんにつりあう人になりたいから。」
そう言うと彼は困ったような顔をして前髪に口付けを落とした。
感覚は無いのに、その行為がどうにも艶かしくて、彼を見ていられない。