なんだかプリンセスになった気分だったのだが、何故自分がこんな高価そうなドレスを身につけなければならないのかがさっぱり分からなくて気分が乗り切らなかった。


そして仕上げに別人かと思うようなメイクを施してくれた時、私のそんな疑問はピークに達した。


「あの!なんでこんなドレスを着るんですか?」


我慢できなくてメイドさんにそう尋ねてみた。


「私には分かり兼ねます。」


しかし帰って来たのはそんな答え。


「でも…。」


「じっとしていてください。」


メイドさんの方に振り返ろうとしたのに、そう言ってグイッと顔を前へ向かされ、ヘアセットを強制続行された。


話も聞いてくれない彼女たちに案の定私の顔は不満気に歪んだ。

そんな不満顔を貼り付けた私の気持ちとは裏腹に、どんどんドレスアップは進んで行き…そしてついに完成した。



そうして「出来上がった私」は結局何も伝えられぬまま櫻木悠希のもとに突き返されたのだ。