「え〜私、こ〜ゆ〜者でして〜」

と言いながら、男が名刺を胸ポケットから取り出すと手渡した。

「…死神商会…だと…?」

「はい、私、死神商会の″死神すぐる″と申します。よろしくお願いします」

そう言って、おじぎをした。

言われた方は、よろよろとしながらベッドに座り込んでしまった。

「…ウソだろ…私は今日、死ぬのか?…ただの風邪だと思っていたが…」

「はい、あなたは今日の10:00付けで、お亡くなりになる予定です」

手帳をめくりながら死神は朗らかに、そう告げると部屋のかけ時計を指差した。

「…いや、ちょっと待て…これは夢じゃ…」

「ありませんよ、桐谷ミレイさん」

「…残り後10分じゃないか…フザケるな…私はまだ、やりたい事があるんだぞ…しかも今日は高校の卒業式で…行けなくて、ヘコんでいたのに…」

「…それは、お気の毒でしたね…桐谷ミレイさん、私はあなたの最後の願いを叶えるために、派遣されて来ました…何か願い事は、ありますか?」