ガシャン



私の手からコーヒーカップが落ちた。

拾わなくては・・・でも睡魔が邪魔をする。






「・・・・・おやすみ。俺専属の可愛い秘書さん。」


社長がそうつぶやいたが私には届かなかった。






誰かに運ばれてる・・・心地いい・・。



私の身体を優しく抱きしめてる・・・でもこれは恒樹じゃない・・だってバニラの香水がすごく・・・・





バニラ・・・!?



私の身の回りでバニラの香水を使ってるのは・・・使ってるのは・・



パチリと目を開くと、目の前に広がる豪奢な部屋に、私はどこか高級ホテルのベッドで寝ていたらしいと理解した。







さっきのは夢だったの?





ここは・・・どこなの?



誰かが私が寝ていたベッドに近づいてきた。



「おはよう、美乃」


私の顔をあげると社長の整った顔。





「・・・ッ!!社長!?」





「社長って呼ばないで、名前で呼んでよ?」


「え?あ・・・えっと・・」





やばい。社長のフルネーム・・知らない。


社員失格だ・・・。





「もう俺のこと忘れたんだ。
美乃って意外と悪い子だよね。」