ふくよかな頬を上げて悪戯っぽくウィンクをしてから、彼女は私の右手にそれを握らせた。


「あの、これ」

「これはプレゼント。ああ、それからこれも良かったら持って行って」


 ジーッ、と音のする冷蔵庫を開いて、500ミリリットルの透明なペットボトルをひょいと取り出す。

「山の水よ。ここをずっと登って行くと、山頂に大滝があってね。そこのお水。自然の物だから、タダであげる」

 喉が渇いていた私は、有難く頂くことにした。




「じゃ、行っておいで」



 背中をぽんと押され、ハッとなる。

 振り返った私に、彼女は、もう一度ウィンクをして見せた。



「……」


 ぴょこんとお辞儀を返してから、再び煉瓦道を歩き始める。





 そうか、彼女はあの人に似ているのだと思った。