その年、珀の誕生パーティーが我が家で行われることはなかった。

 大方、義父が私に遠慮したのだろう。


 心優しい珀は、笑ってそれを受け入れたに違いない。

 もし珀の誕生会をちゃんとやっていたら。朝方、母が御馳走をこしらえていたら。

 流石の私だって気付けたはずだ。全く迷惑な話である。



 そのような諸々の事情が重なり、奇しくも私は、全くの他人であるクラスの女子から、珀の誕生日を知らされたのである。


 まあ、なんだかんだ言って、結局私のミスだった。

 けれどその日の私は、プイと口を尖らせていた。




「珀が誕生日の事、何も言ってくれなかったから、プレゼント買ってないよ」


 知っていたらこんな微妙なクッキーよりも、もっとすごい物を用意したのに。奇妙な怒りが込み上がる。



「え? 今、貰ってるよ」

 珀は首を傾げ、ふわっと微笑んだ。