ごつん。「うっ」


 いきなり声をかけられ驚いた私は、額をショーウィンドーのガラスにぶつけて鈍い悲鳴を上げた。

「あらあら、大丈夫?」
 いつの間にか四十代後半くらいの、小太りのおばさんが立っていた。店の人だろうか。

「あ、すみません。大丈夫です」
 可笑しそうにふくふくと笑うおばさんに、私はポッとなりながら慌てて返事をする。

「随分熱心に見ていたから、つい声をかけたくなったのよ」
 いかにも優しそうな雰囲気で、彼女はふふっと笑った。



 奇妙な懐かしさを覚える。



 私は彼女といつか、どこかで会っているような気がした。

 額をちょっと擦りながら、私は尋ねた。


「山神様って、あの山のですか?」