幸福な家族の輪の中で、私はその正体を常に探っていた。止めればよいのに。


 そのうちに、気が付いてしまう。

 母は、義父と珀に不自然なほど優しく、反対に義父は、母と私に不自然なほど優しかった。


 奇妙な遠慮と硬直がそこにあった。

(やっぱり、他人なんだ。偽物の家族なんだ)


 そう気付いた瞬間、義父の優しさが胡散臭く感られるようになった。




 大好きだったはずの義父が、嫌になる。

 同時に、私の存在を家族の最下位に置いている母にも虫唾が走った。

 やがて私は、母と義父の中に、自分の居場所を見出せなくなった。



 もしかしたら、珀も同じだったのかもしれない。


 だから私たちは居場所を求め、お互いを必要としたのだ。




 神社公園に夕方のチャイムが鳴り響く。珀がケヤキからぴょんと飛び降りて、私の足元で手を差し伸べた。




「五時のチャイムだ。結奈、帰ろう」