緩やかな坂道は、どこまでも続いて行く。

 土産通りを過ぎ去り、何もなくなった細い道のりを進むうちに、ほんのりとした心細さが訪れる。

 やがて、プチっと機械的な音が聞こえ、五時を知らせるチャイムが流れ出した。


 私の町でかかっていたのと同じ曲だ。


 歌詞は忘れてしまった。



 寂しさを払拭しようと、そのメロディーを小さく口ずさむ。




『結奈。歌は大声で歌わなきゃ』

 チッチッチ、と人差し指を立てて笑う珀を思い出す。


 いつかの珀の笑い声。

 かちゃりと、また心の箱が開いて、珀との楽しかった思い出が飛び出した。