夕焼けに染まった玄関の手前で、義父と母と珀が並んで立っていた。


 咄嗟に怒られるのだと固くなった私を、義父は強く抱きしめ「お帰り」と笑った。




「珀のケガは、たいしたことなかったわ」

 珀の両肩に手を乗せて、きゅっと口角を結んだ母は、初めて、珀を呼び捨てにした。


「珀、ソーリー」

 おばさんに教えて貰った英語を使うと、額にガーゼのついた珀が透き通った笑顔を向ける。


 不思議なことに、今まで大嫌いだった珀の無邪気な笑顔が、とても眩しく見えた。


 珀は必死に何かを思い出しながら、ゆっくり口を開いた。