「珀、分かってるよ」

　ぐちゃぐちゃになった顔で、私も精一杯の笑顔を向ける。

　これが本物の珀じゃなくても、珀が笑って欲しいと望むなら、私は笑いたい。



「本当のことを言うと、結奈が世界から目を背けて眠りについた時、嬉しかったんだ。結奈が、僕を選んでくれた。そう感じたから。だけど、それは正しい選択じゃない」

　珀はもう、涙を止めていた。

　代わりに、今までで一番、とびっきり綺麗で力強い笑顔を見せてくれる。



　私の大好きな、琥珀色の瞳がキラキラ眩しく光る。



「僕はずっと結奈と一緒だよ。例え結奈が僕を忘れても、僕の想いは、君と共にある」

　景色がゆらゆら揺れる。



「結奈が笑顔でいてくれるなら、僕もずっと笑っていられるんだ」

　珀の姿が薄れていく。


「珀！」

　伸ばした手が、空を切る。





「結奈」



　微笑む珀が、バラ色の唇を動かした。