「おばさんはね、結奈ちゃんがちゃんと謝れる子だって知ってるの。思いやりのあるいい子だって知ってるのよ。それに、勇気のある子だって知ってるのよ」
髪を押さえつけるようにして、彼女は私の頭を何度もしっかりと撫でてくれた。たぶん、何かしら事情を察していたのだろう。
泣くだけ泣いてしまうと、私の意地っ張りな心は次第にほぐれ、代わりに珀に対する罪悪感が生まれた。
珀に謝らなくっちゃ。
優しくしてあげなくっちゃ。
今すぐに。だけど……
「じゃ、行っておいで」
見上げた私に、おばさんはウィンクをして、肉厚の手で背中をぽんと押してくれたのだ。
丁度、三猿をくれたお土産屋のおばさんのように。
ほどよく温まった手の平が、私に勇気を与えてくれた。
そうして私は一歩ずつ、歩み出したのだ。
家に向かって。
珀に向かって。