「結奈」

 珀の輪郭は薄れることなく、力強く目の前に存在していた。



「珀……」

 私はすがる様に、珀を見つめる。



「結奈。君は今、とても混乱しているんだろうね。それに、僕がこの光景を見せたことを、批難しているんだろうな」

「その……とおりよ」


 おしぼりを目頭に当てる。

 この温かさが無ければ、きっと私は涙を止められない。






 私は、珀が死んでいくのを受け入れられなかった。