どこをどう走ったのか、結局、私は家の近所に舞い戻っていた。
「あら結奈ちゃん、しょんぼりしちゃって、どうしたの」
駄菓子屋の前を通った時、店の小太りのおばさんに呼び止められた。
「別に、なんでもない」
私の小さな呟きに「水あめ食べて行きなさい」と、おばさんは微笑む。
店先の長椅子に腰かけると何故か少しホッとして、足をぶらぶらさせながら、私は貰った水あめを付属の割りばしに巻いて、ちろちろ舐めた。
おばさんは私の隣にでんと座り「夕日がきれいねぇ」と独り言のように呟いたけれど、私は一心に水あめを舐め続けた。それを止めてしまったら、心が潰れてしまいそうだったからだ。
「結奈ちゃんは、いい子よ」
ふいにおばさんは、私の頭を撫でて呪文のように言った。
「結奈ちゃんは、いい子」
途端に涙が止まらなくなって、私は水あめを舐めながら、しゃくりあげて泣いたのだ。