唐突に観光地特有の土産通りが現れ、声にならない驚きが漏れた。それから、すぐに可笑しくなる。


 古く萎びた、年季の入った横並びの建物群。つまりそれらは、ずっとそこに存在していたのだ。


 ただ単に、私が見ようとしなかったに過ぎない。



 境目の分からない閑散とした土産屋を横目に楽しみながら、私はゆったりと歩を進めて行く。

 店はどれも小ぢんまりとほの暗く、皆同じような品物を同じように設置していた。

 ポテトチップスや乾き物の棚、乳製品会社のロゴが付いた、分厚い霜だらけのアイスボックス。ちょっとした菓子パン。

 全てが古くてきな臭い。今まさに通り過ぎようとしている店先の、回転式のキーホルダーラックに至っては、白いメッキがパリパリに剥がれ、回せば嫌な音を立てそうだ。




 初めて訪れる場所。



 なのに、いつか、どこかで見た風景に似ている。



 そうか。



 子供の頃、ゴールデンウィークに家族で出かけた温泉街が丁度こんな感じだった。外観こそ似ているものの、そこはもっと人が溢れていて、私は迷子になるんじゃないかと怯えていた。



 
 その人ごみの中にあって、私が道を誤らなかったのは、懐かしい彼のおかげだった。