「何を言っているの? あれは、お母さんが」
「お母さんはね、『結奈が寂しがるから、せめて電話だけでもしてあげて』って、一週間後に、大量のテレフォンカードをくれたんだ。『私には言えない事も、あなたにだけは言えるみたいだから』って、寂しそうに笑っていたよ」
「そんなはず……だって、テレフォンカードはお義父さんが珀にくれたコレクションだって」
「お母さんは、『私の提案だと知れば、結奈は素直に受け入れないから、内緒にして欲しい』って、僕に頭を下げたんだ」
「……嘘よ」
珀の微笑みが薄くなる。
カップを口に近づけようとして、躊躇する。
琥珀色の液体は、いつの間にか残り僅かになっていた。
たぶん、あと。
「あと二口だね。結奈。さあ、もう一口それを飲んで。そうすれば、君の現在が見えるはずだから。やまがみさんに、そうオーダーしてあるんだ」
「……」
押し黙って様子を見守っていたやまがみさんが、珀の続きを引き取った。