「結奈、僕のせいで、ごめんね」


 珀は濁った目を凝らし、私の手を必死に探していた。

 まるで氷のように冷たく、骨ばった指先が私の腕に触れた時、世界が奇妙に歪み始めた。




 歪んだ病室。

 歪んだ母。

 歪んだ義父。




 珀も……歪んでいる。





(きもち……悪い)

 珀から離れ、手をついた棚の上で、赤紫色のアジサイだけがやけに鮮やかに映った。