「結奈は日本人で、日本語を話せるでしょ? でも、珀君は知らない国に突然連れて来られて、言葉も分からないからとても心細いの。それくらいのことが、どうして分からないの? ああ、情けない」

「だって」

「言い訳はいらない。珀君とは学年も同じなのよ。もっと仲良くしてあげなさい。珀君はいつもニコニコして可愛らしいのに、どうして結奈はそんな顔しか出来ないの。情けない」


 母は、私が頬を膨らます度に「情けない」を連発した。その母の言葉に、心のどこかがザクザクささくれ立つ。


 思えば、私と母の溝はあの頃から存在していたのかもしれない。


 義父は申し訳なさそうに、時折私を抱き寄せ頭を撫でた。

「ごめんな、結奈。珀が馴染むまで辛抱してくれないか」

「……うん」


 義父の前ではいい子でいたい。

 だけど、もっと私を見て欲しい。



 もっと、構って欲しいんだよ。


 ただ、それだけなのに。