「結奈? ごめん、もう少し、近くに、来てくれないと、見えないんだ」


 その子の透き通った声は、まさしく珀のものなのに、分厚い眼鏡の奥に、あの、美しい瞳は無かった。

 代わりに、ねばねばの目やにでいっぱいの、白濁した瞳が映る。



 寒くないのに、サーと全身に鳥肌が立った。

 得体のしれない恐怖が、頭と心を支配する。




 何が恐ろしいのか分からないけれど。






 ただ、ただ、恐ろしかった。