西洋育ちの珀は、始め、日本語が全く喋れなかった。だから珀が何かを話す時、母も義父も流暢な英語を使い、大げさなジェスチャーで笑い合った。

 その度に私は独りぽつんと取り残される。

 家の中だけは、私の独壇場のはずなのに。家の中だけは。


 私はむくれた。

 最初こそなだめていた母も、そのうちうんざりし始め、やがて、私の言動を叱るようになった。



 取り残され、むくれて、叱られる。
 毎日、毎日。
 そんな日々が、続いた。


 珀が来て、母は私に冷たくなった。


 珀が綺麗な顔をしているからだと思った。綺麗な子供が出来たから、普通の私なんていらないんだ。

 きっとそうだ。


 そして、また叱られる。