「結奈! 洗濯物は叩いてから干してって言ったじゃない! ブラウスがしわくちゃじゃないの!」

「結奈! 靴下はその辺に脱ぎ捨てないでって言ってるでしょ!」

「結奈! 使ったコップは自分で洗いなさい! お母さん、疲れてるのよ! どうして協力してくれないのよ。情けない」

「結奈!」

「結奈!」

「結奈!」


 病院から戻ってすぐは殊更機嫌が悪く、母は私にやたらめったら当たり散らかした。


 そうやって私に罵声を浴びせることで、母はストレス解消しているのだと思った。


 結局、母にとっての私は怒りのはけ口、ストレス解消の道具、つまり、サンドバッグのようなものなのだ。




 その辺りから、母の事を母と認めなくなっていたのかもしれない。

 それで便宜上、『お小言マシン』と母にニックネームを付けたのだ。