少し間があり、おっとりと珀が笑う。

「結奈は今日も、出るのが早いね」

 珀の口調と正反対に、私はまくしたてるように早口で喋る。


「だって、お母さんがそっちから帰ってくるまで、二十分しかないんだもん。十分前には電話を切って、二階に上がってランドセルを置いて、テレビを付けて、おやつを半分くらい食べてないと怪しまれるでしょ? 時間は一秒も無駄にできないからね」

「そうだね。僕が病室を抜け出して、電話まで行くのにも、少し時間がかかるからな」

「ううん。それは全然いいの! だって珀は病人でしょ? 走っちゃだめよ。でも良かったよね、珀が沢山テレカ持っていて」

「うん。ずっと前に、お父さんから貰ったテレフォンカードのコレクションが、こんな風に役立つとは思わなかったよ。まあ、それは置いといて、今日の結奈の話を聞かせて」

「聞きたい? 今日はね、体育の授業でなわとびしたんだけど……」



 珀は私の一日の出来事を「うん、うん」と聞いてくれ、時折笑ったり、「へえ」と驚いてくれたりする。