学校の授業終了のチャイムが鳴ると、私は弾丸のように教室を飛び出し、全速力で帰宅する。

 有難いことに、担任の先生が私の家庭の事情とやらを考慮してくれたおかげで、私は三学期中、放課後の掃除当番や係の仕事の一切を免除されていた。



 息を切らして家の鍵を開けると、ランドセルもそのままに、私は玄関の電話の前で行ったり来たりを繰り返す。



「ジ」

 ジリリリと、最後まで鳴ることを許さずに、受話器に飛びつく。



「もしもし、珀?」