私の家庭は、少々複雑だ。



 私の実父は、母と当時二歳だった私を捨てて愛人の元へ行ってしまった……らしい。


 それから数年間は、母子二人、小さなアパートを借りて細々と暮らしていた。

 一方その頃、義父は仕事の都合でイギリスに住んでおり、そこで知り合った西洋人の女性と結婚し、珀が生まれていた。

 珀の実母は間もなく病気で亡くなり、義父は亡くなった奥さんの実家で、珀と祖父母の四人暮らしをしていた。



 私と珀が別々の場所で五歳を迎えた頃、義父に日本への一時的な転勤命令が下った。

 義父は珀を祖父母に預け、単身、日本にやって来たのだ。
 そして、外語大学時代のサークル仲間が開いてくれたお帰りパーティーで、後輩だった母と再会した。

 お互い寂しかった二人は急接近。義父は日本に留まることを決意し、珀をイギリスに残したまま、翌年、母と再婚した。


 そういうわけで、私は、珀と言う存在を小学三年生のその日まで知らずに過ごした。