「お母さんは、世間体、世間体だもんね。お母さんが大好きなのは、世間の知らない人たちなんだもんね。私の誕生日より、他人の結婚式。私の気持ちより、病院の他人。いつもそう。お母さんは、血がつながらない人が好きだもんね。家族の中でも、私は最下位」

「結奈、違うんだ。お母さんは」

 割り込んだ義父に、母が「いいのよ」と首を振って、ぴしゃりと言い放った。




「とにかく、結奈が何を言おうが喚こうが、これは決まったことだから」



 最高裁判所で、「有罪」と判決が下された気分だった。

 この決定は、絶対に覆らない。


 私はもう、珀の病室へは行けない。

 母を睨みつけ、赤いランドセルを背負って玄関に向かうと、「行ってきますくらい言いなさい!」と、ヒステリックな声が追いかけてきた。




 珀のいない三学期は、こうしてスタートした。