残り少ない冬休み期間は、それでも楽しかった。
何故なら、私も母と付き添って珀の見舞いに行けたからだ。
珀の個室は入院棟の八階にあって、部屋の窓からは小指の爪くらいの海が見えた。
私が部屋に入ると、青いギンガムチェックのパジャマを着た珀が「いらっしゃい」と迎えてくれた。
珀は病人だったし病室から出られない制限があったけれど、それが逆に新鮮で、私は見舞いを満喫していた。
珀は私の前でいつでも元気だった。
だから私は、珀の病気はすぐに治るものだと思い込んでいた。
それまでの期間、病院で退屈している珀の遊び相手になってあげることが、私の使命だと信じていたのだ。