祥の顔が間近にある。

祥の腕があたしの背中と脚を支えていた。

え、もしかしてこれって……。

お姫様抱っこ!?

「ちょっと、降ろしてっ」

「やだ」

「降ろしてってばっ」

あたしは恥ずかしくて、つい大きめの声になる。

それでも祥は降ろしてくれなかった。

だから、自分から降りようと試みる。

「ちょっ、暴れんなっつーの。危ねぇだろうが」

「ヤダ。降りるっ」

あたしはズキズキ、フラフラする身体を抑えて、祥から離れようともがく。

「麻結。大人しくしてないとキスするぞ」

「うっ……」

返す言葉がなくなり、あたしは仕方がなくされるがままになった。

不思議と祥の胸の中は温かくて心地良かった。

祥はあたしに気を遣ってか、優しく抱きしめながら歩いていた。