見なれた街並みが見えてきた。


「お客さん、ここでいいですか?」



「はい」


料金を払ってタクシーを降りた。


アンブレラの入り口は定休日で閉まっている。


裏口側から外にも二階に上がる階段があり、そこから上って行った。


玄関の呼び鈴を鳴らした。



眠そうに店長が出て来た。


「汐里ちゃん、どうしたの?」


「お休みの日にすみません」


「とりあえず、中に入って」



店長は私に中に入るように促した。


ここに来るまでにかなりの時間が経ってしまっていた。


今頃、駿は私がいなくなった事に気づいているかもしれない。


もう…きっと呆れて追いかけてなんか来ないとは思うけど。


それでも落ちつかなかった。


「とりあえず、座って今紅茶いれてくるから」


「店長、急ですみませんがアンブレラを辞めさせて下さい」