『お陰様で長生きをすることができました。ワタクシは良い猫人生を過ごさせて戴きました』




そして小梅さんは顔をあげました。



『何もご恩返しができずに心苦しいのですが、今宵にてワタクシ、おいとまさせて戴きます』




小梅さんの顔のひげがゆらゆらと揺れました。




私は何も言葉がでません。
うまく紡げない言葉の変わりに、涙があるのかもしれません。



小梅さんは、私の手にその温かい手を乗せました。

肉球の感触が伝わります。



『泣かないでください、ワタクシは死ぬのではありませんから』




肉球がぷにっとしました。
小梅さんの前足に力が入ったのです。