私は、頭がおかしくなったのではないかと、自分の耳を疑いました。 決して寝惚けていたのではありません。 夜の十時など、私にとってはまだまだ宵の口。欠伸もでない、浅い時間なのですから。 ――― いつもと同じ、夜十時。 飼い猫の小梅さんが茶の間に顔を出しました。 茶の間には小さな卓袱台があり、それを囲むように四枚の座布団が置かれています。 私はテレビの正面に座り、卓袱台には湯飲み茶碗が幽かな湯気をたてていました。