「ちょっと、圭吾くんとデートしたって本当!?」
翌日、大学へ行くと朝一で綾乃から尋問を受けた。
「それ、誰から聞いたの?」
「未耶子おばさんがメールで教えてくれたの!
どうしてそんな大事なこと黙ってたの?」
ママったら、口が軽いんだから……。
「ねえ、どうだった?どこに行ったの?
手はつないだ?チューとかしちゃったりして?」
「そんな……してないよ……」
「やだ、赤くなっちゃって……もしかして、まさか、その先まで!?」
一人でエキサイトしていく綾乃に、私は意地悪く笑ってみせた。
「ぜーんぶ秘密!」
ごめんね、綾乃。
誰かに話しちゃうのは、もったいないんだ。
二人だけの思い出は、少しもこぼさないまま、この胸に大切に取っておきたいの。
決して器用ではないけれど、優しくて。
普段は寡黙なのに、音楽のことになると口数が増えて。
そして、ステージでは何よりも輝く。
そんな彼を、私は、愛し始めていた。