帰り道。
行きの明るいBGMから一転して、車内にはバラードが流れていた。
窓の外を見ると、山の谷間に夕日が沈んでいく橙の景色。
感傷に胸が、じん、とうずく。
その景色に寄り添うように、ソウルフルなボーカルがスピーカーから聴こえてきた。
空へ飛び立ちたくなるような雄大さと、自由さと、夕日に似た切なさを感じる。
「素敵な歌」
私は思わず、うっとりとつぶやいた。
「そういえば夕日に似合うな、この歌」
「はい、とっても」
「……なんか、嬉しいな」
押し殺したような声が気になって圭吾さんを見ると、そこには穏やかな笑顔があった。