「……あと、かき氷を一つ」
沈黙を破ったのは、圭吾さんだった。
「お味は?」
尋ねられると、圭吾さんは私を見ながら。
「イチゴの、練乳かかってるヤツを」
すると店員は私と圭吾さんを交互に見やって、「かしこまりました」と頬笑み、厨房へ戻って行った。
私は、状況がよく飲みこめない。
「あの……」
「俺、溶けたかき氷が好きなんだ」
「はい……」
「だから俺が飯食ってる間、つついて溶かしといてくれるかな」
きょとんとしていた私は、うなずいて、そのときやっと気がついた。
そうか。
彼が食べている間、私が手持ち無沙汰にならないように、気を遣ってくれたんだ。
動揺や葛藤も見透かされていたんだろう。
ほんとは、溶けたかき氷なんて好きじゃないのかもしれない。