そんな余韻に浸っていたのも、つかの間。


私はとんでもないことを忘れていた。




待ち合わせしたのは、午前中。


今は、夏本番を前に長居するようになった太陽ですら、傾いてくる時刻。


この一緒に過ごした数時間、圭吾さんは何も口にしていない。




「圭吾さん、お腹、空いてませんか?」


「どうしたの、急に……」


「お腹、空いてないですか?」


笑い飛ばそうとする圭吾さんへ身を乗り出して問いただすと。




「まあ、ちょっと空いてる、かな……」




遠慮がちにもれた本音に、罪悪感が津波のように押し寄せた。




「言ってくれればよかったのに……!」


「でも、俺ばっかり食べるのも気が引けるな、と思って」


そう言って、申し訳なさそうに笑う圭吾さん。




物が食べられない私のために、我慢してくれてたんだ。


それに気づかずに、私は。……