車は高速に乗り、隣県へと入った。


自分で言っておきながら、星の見えるところがどこなのか、さっぱり見当がつかない。


でも圭吾さんには、はっきりとした目的地があるみたい。




会話は、あまりない。


それでも寂しくないのは、ジャンルを問わず、夏らしい音楽が車内に流れ続けているから。




アナログの匂いがする、転がるようなギターの効いたインスト。


ボーカルのシャウトが熱いハードロック。


声の力に圧倒される、にぎやかで楽しいアカペラ。


最近話題の女性シンガーのアップテンポナンバー。……




知らない曲も多い。


でも、こんな歌が好きなんだって思うと、私も好きになってしまう。


ときどき圭吾さんの歌い方と似ているフレーズが聴こえて、彼の音楽の礎に触れた気がする。


嬉しくてうっかり食べてしまわないように、口をしっかりと閉じて、静かに耳を傾けていた。