「嫌いってわけじゃ、ないんです。
ただ、あんまり考えたことが、なくて……」
何か話さなくちゃ。
頑張って声を出してみるけれど、上手な答えが思い浮かばない。
こういうとき、綾乃なら何て言うんだろう。
やっぱり、私ってダメだな。……
落ちこんでいると、圭吾さんは。
「変わってるね」
と、一つこぼした。
この前の私だったら、きっとこの言葉をネガティブにとらえて、また落ちこんだと思う。
だけど彼のことを知るにつれて、その足りない言葉の尻尾をつかめるようになってきた気がする。
今の尻尾は、すごく優しく、楽しそうに揺れていた。
「私、変わってますか?」
もう一度、確かめてみると。
「変わってる」
尻尾は、ちゃんと喜んでる。
嬉しくって思わず微笑むと、今度は尻尾をつかむまでもなく、もっと嬉しい言葉が聞こえた。
「俺、そういうの、好きだよ」