前回の教訓により、お誘いは受けたものの、私は打ち上げには参加しないことにした。
「でも、こんな夜遅くに沙妃ちゃん一人で帰るのは危ないよな」
「じゃあ俺、送ります!」
「ちょっと待て、お前じゃ危ないから、俺が送る!」
「どっちもどっちだから、ここは俺が」
突如巻き起こった争いに、ただオロオロしていたら。
「ちょっと待った!」
手を挙げたのは、綾乃だった。
「この前、沙妃を帰らせた直接の原因は圭吾くんよ。
だったら、ここは圭吾くんが責任を持って沙妃を送るべきじゃない?」
無理のある屁理屈だけれど、綾乃の勢いが、それを正当だと感じさせた。
みんなが、圭吾さんに視線を集中させる。
「……そうしたほうがいいなら、送るけど」
「よし、決まり!」
綾乃はすかさず車を取りに行くよう圭吾さんをまくし立てた。
すると、圭吾さんはいきなりシャツを脱ぎ始める。
引き締まった腹筋が見えてしまって、驚いた私はとっさに目を逸らした。
「ちょっと、女の子の前なんだから、少しは気を遣ってよ」
「でも、こんなに汗かいたままじゃ行けない」
綾乃は平気で会話を続けている。
日頃から男の人に紛れて生活していると、こんなことにも慣れてしまうものなんだろうか。