「じゃあ、これでこの前の嫌な感じもなかったってことで!」
この綾乃の一声で、雰囲気は前回のようににぎやかになった。
「よかったよかった。これで、これからは心おきなくみんなと仲良しね」
「うん」
『病気』だと嘘をついていることの罪悪感は拭えない。
けれど、今はできるだけ笑っていたいと思う。
「ねえ、沙妃」
綾乃が手招くから、右耳を差し出すと。
「圭吾くんの歌を聴いてるときの沙妃、すっごく幸せそうな顔してたよ!」
「……そうかな」
照れて頬が熱いけれど、否定はしなかった。
そう見えた綾乃の目が間違ってないことは、この胸がよく知ってるから。
そっと、圭吾さんの姿を探す。
彼は今日も部屋の隅で一人、静かにミネラルウォーターを飲んでいた。