「だいたいさ、沙妃は自分が周りからどう思われてるか分かってないんだよ!

ただでさえ沙妃みたいに白くて、細くて、小さい子は、男の庇護欲をくすぐって止まないのに!」


「え?」


「おまけに可愛いんだから、不意に襲われやしないかって、いつも心配でたまらないんだよ!」


そう言い終わるが早いか、綾乃は私に抱きついてきた。


「そんな、大丈夫だよ。

私のこと、そんな風に見てる人なんていないだろうし」


「ほら、分かってない!その隙だらけなところが危ないの!

万が一そのへんのイモ野郎に手を出されたりしたら、もうあたしはソイツを……」




それから綾乃の口を飛び出した暴言に、私は脳みそが沸騰しそうになった。




「そ、そこまでしなくても」


「してやるわよ!

沙妃はずっと苦しんできたんだもん、これ以上苦しめる奴は許さないんだから!」


「綾乃……」


「沙妃に近づいていいのは、沙妃を大切に大切にしてくれる人だけなの」




思わず涙腺が緩む。


こういうことを言われると、我慢しているいろんなものが一気にあふれ出しそうになるから困る。




「……ありがとう」


「どういたしまして」


結局、何の話をしていたのかも忘れて、二人でくすくすと笑い合った。




「……でも肝心のアイツもオクテだから、もどかしいのよね……」




「え、何か言った?」


「いいえ、何でも……」