『髪の長い女の子を見かけることがあって』
『その子を見た日は、いつもよりうまく歌えるような、気がして』
あの日から私は、圭吾さんの言葉を反芻しながらすごしている。
どうしても頭から離れない。
その言葉の続きが、言葉の向こう側にある真意が何なのか、ずっと考えている。
でも、答えは出ないまま。
「ねえ、あれから圭吾くんと連絡取ってる?」
大学での昼休み、綾乃がコンビニのサンドイッチを頬張りながら尋ねてきた。
「食べながら喋るなんて、お行儀が悪いよ」
「もう、質問に答えてよ!連絡は取ってるの?」
「……うん、まあ」
「まあ?微妙な返事だなー」
不満そうな綾乃。
でも、あの日のことは言いたくない。
言ったら少しは納得してくれるんだろうけど、なんだか私だけの秘密にしておきたい気分。