大学を出て、歩くこと十五分。
待ち合わせしたデパートの前に、圭吾さんを見つけた。
遠くからでもすぐに分かるのは、他より抜きん出ている身長のせいだけじゃない。
彼だけ、色が違って見える。
これがステージに立つべく生まれた人のオーラというものなのだろうか。
私は恐縮しながら声をかけた。
「お待たせして、ごめんなさい」
「大丈夫。俺も今、きたところ」
小さく笑うその声は、殺したはずの食欲を強引によみがえらせて私をあせらせる。
魅力的すぎるんだ。
いっそ憎めたら楽になれるのに。
そんな私のゆがんだ心なんて知る由もない圭吾さんは、何か目的を持っているようで、一人歩き出した。
「あの、どこへ……?」
「まあ、ちょっと」
本人の言ってた通り、圭吾さんは言葉足らずだ。
今日も私は不安なまま、長い足でぐんぐん歩いていく彼の背中を懸命に追いかけなければならなかった。