「ところで、もちろんメアドは交換したんだよね?」
まるで決まりきった事柄を確認するように、綾乃が身を乗り出してきた。
なんだか、嫌な空気。
「え、いや……してないけど」
そう答えると、案の定、みるみる歪んでいく綾乃の顔。
「なんてこと!
オクテとかの次元を超えてる、信じられない!」
頭を抱えたかと思えば、素早く携帯を取り出して、ボタンを高速連打し始める。
「な、何してるの?」
「圭吾くんに沙妃のメアド教えてるの」
「えっ?ちょっと、そんな勝手に……」
言い終わらぬうちに、綾乃はメールを送信してしまった。
「圭吾くんって、誰?」
ずっと私たちのやり取りを傍観していたママが、目を輝かせている。
綾乃がいたずらっぽく笑って「秘密」と答えた次の瞬間に、私の携帯が鳴った。