圭吾さんがさくさく歩き出したので、私はそれに小走りでついて行く。
公園に着いても、無言。
噴水池の脇にあるベンチに、なんとなく座らなければならないような雰囲気になって、座ってみたら私達の間には二人分くらいの微妙なスペースができた。
その間を、ストリートミュージシャンの歌が所在無げに漂っている。
「昨日の、ことなんだけど」
何の前触れもなく圭吾さんが切り出して、肩が震えた。
話を聞くのが、恐い。
でも、その声をもっと聴きたいとも願ってる。
そんな矛盾した気持ちを整理できないまま、身を固くしていると。
「綾乃から聞いたよ。
沙妃ちゃんは、その……病気、だって」
病気。
きっと綾乃はいつものように、こう説明したんだろう。
『生まれつき物が食べられなくて、栄養は全て注射や点滴から摂取している』
これは、この特異体質をごまかすために昔から使われてきた、半分の本当と、半分の嘘だった。