どれくらいそうしていただろう。
重苦しい空気を引き裂くように、携帯電話が鳴った。
発信者は、綾乃。
……出たくない。
でも、いつまでも鳴り止まない着信音に根負けして、渋々通話ボタンを押した。
「……もしもし……」
「暗いくらーい!そんな幽霊みたいな声出さないの!」
あまりにも大きな声に、耳から携帯を離した。
「えー、沙妃隊員に召集命令!
本日夕方四時、場所は聖地前の駅!
夕食がてら出動せよ!ほんとに!絶対に!
来るまで待つ、以上!」
まくし立てるだけまくし立てると、一方的に電話は切れた。
「隊員って……」
訳が分からないけれど、綾乃は言い出したら聞かない。
私に選択肢はなかった。