二階へ上り、通された「STAFF ONLY」のドアの向こうには、興奮冷めやらぬ今日の出演者達がいた。
「おう、お疲れさん」
男性が声をかけると、みんな子供のように大声で挨拶をする。
そんな男の人ばかりの出演者の中から、女の子がひょいと顔を出した。
「あ、沙妃!」
衣装のままの綾乃が、勢いよく駆けてきて私に抱きついた。
その体は熱くて、のぼせてしまいそう。
「綾乃、お前のいとこは危なっかしいな。
放っておけなかったから連れてきてやったぞ」
「トワさん、ありがとう!」
綾乃は私を抱きしめたまま男性に礼を言った。
彼は「トワさん」といって、このライブハウスのオーナーらしい。
とても慕われているようで、彼の周りにはすぐに人の輪ができた。
「おい綾乃。いつまで独り占めにしてる気だ。
みんな早くその子を紹介してほしくて待ってるぞ」
トワさんに言われて、綾乃はやっと解放してくれた。
「ごめんごめん、皆様お待たせしました!
こちらがあたしのいとこの沙妃ちゃんです!」
綾乃に背中を押され、一歩前に出ると、喝采が起こる。
「美少女!」だの「可愛い!」だのと、はやし立てる男性一同。
「ねえ綾乃、紹介したいのって、もしかして……」
「いや、こんなふうに紹介するつもりはなかったんだけどね。
この際だから、みんなと友達になっちゃいなよ。
大勢のほうが楽しいって!」
「そんな……」
私は不安たっぷりに、たくさんの顔を見渡した。