地面を揺らす歓声が沸き起こる。


現れた『Sir.juke』のメンバーは、スポットライトを浴びるにふさわしく、タイプはそれぞれ違うけれど、みんな美しかった。


そしてステージ上での紅一点、綾乃は向かって右側、ギターの奥隣にキーボードと共にいた。


ホットパンツから伸びる長い足を惜しげもなくさらし、髪をアップにしている姿は格好良くて、いつもとは別人みたい。


蝶の羽をまとったような輝くまぶたに見惚れていると、目が合った。


綾乃は、歯を見せるのをこらえるように、すまして笑った。




……と、ここまでは一瞬の出来事。




ドラムのカウントから始まった演奏に、世界は一変した。




皮膚を裂かれそうなほどの爆音が、洪水のように私を飲みこむ。


CDでは味わえない、楽器の叫び、息遣いを感じる。


驚いて身じろぎもできずにいると、ボーカルがマイクスタンドに手を添えた。




少し長めの茶色い癖毛、広い肩幅、マイクをつかむ長い指……


彼の存在感が突然濃度を増して、ステージを染め上げる。




その彼の、声。




刹那に、私はすべてを奪われた。