私は全然苦しくない。
だからケンカしないで。
そんなつらそうな顔を見るのは悲しいよ。
いつも仲良しのパパとママが好き。
「パパ……」
音になっているのかさえ分からなかったけれど、この声を拾ってくれた二人は、はっとして私を見た。
「パパ……ママ……」
私は、思い通りにならない喉から、やっと気持ちを吐いた。
「もう、いいんだよ」
すると、パパはみるみる肩を落とし、動かなくなった。
その目は声を失ったあのときと同じ、いや、それ以上に、うつろな空洞みたいで。
「沙妃ちゃんっ……どうして、どうして……!」
ママは、パパにすがって泣き出した。
やっぱり私は、親不孝な娘だ。
パパとママをこんなに悲しませている傍らで、二人の子供に生まれてよかったと、心から幸せを感じてるんだから。