次に目を覚ましたとき、私はママの悲鳴を聞いた。
何が起こっているのか、あたりを見渡そうとして頭を倒すと、口の端から何かが伝う感触。
とろりとして、生温い。
ああ、血だ。
と、思った。
それが他人事みたいなのは、痛みや苦しみをまったく感じられないから。
視界に見つけたママは、ひどく取り乱している。
「あなた、何をするの!?」
見ればベッドの脇にはパパもいて、私の腕には注射針が突きつけられていた。
腕をつかまれているなんて、気づかなかった。
首から下の感覚があまりなくて、ふわふわとしている。
気分は悪くない。
だからパパとママが言い争っているのが、この目には滑稽にも映った。
「やめてください!
どうなるか分からないって、だから何もできないって、言ってたのはあなたでしょう!?」
ママがパパの腕を引っ張りながら叫ぶ。
パパは、とても恐い顔をしている。
『何もしないで見ているだけなど、もう耐えられない』
目が、ママにそう言い返している。