許されるなんて思ってない。
でも、言わずにいられなかった。
「ごめんね」
温かい陽射しにさえかき消されてしまいそうな声で、もう一度。
「ごめんね」
すると、突然身を切るような北風が吹いた。
暖かい陽気など気まぐれで、まだまだ冬は終わっていないのだと思い知る。
油断してショールを忘れてしまったために足元が冷えて、身震いすると。
車椅子が止まり、音もなくカシミヤのマフラーが降ってきた。
そして、それはふんわりとひざに乗る。
振り向こうとしたら、パパが私の前まできてくれた。
「パパ、寒いでしょ」
マフラーを力なく握って言うと、その手は大きなぬくもりに包まれた。
なぜ?
瞳で問いかけると、返ってきたのは、優しい瞳と穏やかな笑顔。
手をつないで歩いていた、あの頃とおんなじ笑顔だった。