とたん、綾乃は身を乗り出して声を上げた。
「ねえ、圭吾くんに会おう?
それで、声、ちょっとだけでいいから食べさせてもらおうよ。
もう我慢なんてしなくていいから。
ほんとに、ちょっとだけでいいから、ねえ。
そうしたら体の調子、良くなるかもしれないよ。
圭吾くんも沙妃に会えたら、きっとすごく喜ぶから!」
悲痛なまでの叫びだった。
こんなにも思ってくれてる。
分かるからこそ、この一言をしぼり出すのがつらかった。
「会いたくない」
「そんな……そんなわけない!
なんで沙妃はいつも、つらいほうばっかり選ぶの?
幸せになってよ!
みんな、沙妃に幸せになってほしいんだよ!」
なおも食い下がってくる綾乃の言葉は、弱ったこの心と体を容赦なくきしませる。
思いが強ければ強いだけ、受け止め切れなかった。